月に数回、救急外来での勤務(夜勤)がある。
救急外来で勤務をしていると、「外部」から電話がかかってくる。
主に相談の電話なのだが、先日の夜勤では「他の病院からもらっている薬が今日で切れたので、1日分だけ処方してもらいたい」との問い合わせであった。
精神科の患者さんからの問い合わせだったのだが、基本的に『長期的に薬をコントロールしている患者さん』の「1日だけ」の処方はしない。
薬の内容が違ったり、他院であれば、同じ薬を出せない場合もある。
まして、精神科となると、今での経過を知らないで安易に処方はできない。
もちろん「お断り」案件になるのだが、患者さんは納得しない。
比較的大病院になると、世間からは「何でも対応してもらえる」「何でもできる」というバイアスがかかる。
緊急的な治療はできるが、このような「慢性的な」案件に関しては対応が難しい。
「申し訳ありませんが、かかりつけ医の方にご相談ください」というのが関の山。
それ以上の提案は難しく、患者さんの話(クレーム)を延々と聞いていくしかない。
患者さんによっては電話口で怒鳴り出す患者さんもいる。
くだんの患者さんはなかなかの強者であった。
電話を切ったあと、1~2分後にまたかかってくる。
説明している途中で電話を切る。
そして、またかけてくる。
ご家族からも電話があり、「本人が『処方してもらえるようになった』と言っていますが、本当でしょうか?」という問い合わせ。
「処方できない」と説明しているのに、家族には「処方してもらえる」と言っているようだ。
(家族は理解の良い人で助かったが・・・)
そして、このやりとりが約2時間続いた。
1人の電話に2時間・・・
これも仕事だと言い聞かせているが、こういう日もある。
基本的に「救急外来」というのは、「救命」や「一時的な対処」をする場所である。
「かかりつけ医」にはならないし、「処方だけ」は行わない。
今の状態が「命に関わるか否か」を判断し、必要であれば対処する。
急ぎでなければ、地域の病院につなげる。
「症状が悪い時にだけ、救急に行けば良い」では、根本的な治療はできない。
あくまで対処療法でしかない。
しかし、救急外来には「お得意様」がいる。
・普段酒ばかり飲んでお金がなくなった頃に「入院させてくれ」という生活保護の患者さん
・「眠れない」と定期的にくる患者さん
・「風邪薬が無くなった」と定期的に受診にくる患者さん
受診拒否はできないので、難しい問題であるが、「違うよ・・・」と感じる時がある。
納得できない事をやるのも仕事・・・と言い聞かせているが、やはりそこは人間。
心の中で「バカじゃないの」と思っても、うっかり口にしないよう気をつけないといけない。
顔に出さないのがプロなのだ。