先日、フォローワーの方から悩み相談を受けた。
一部改変して紹介する。
当部署に、怒りに任せてクリアファイルをテーブルにバンバン叩きつけながら特定のスタッフを否定する人がいます。
否定されたスタッフは、「次から気をつけます」と言って、その人の意見を受け入れていますが、他にも後輩を怒鳴りつけたり感情のまま言葉をぶつけることも、しばしばあります。
どのように指導すべきなのか悩みます。
何かアドバイスいただけないでしょうか?
私がICUにいた時にも、同じような人がいた。
感情のコントロールができず、『自分の気に入らないこと』や『スタッフの判断ミス』に対して立腹し、ため息をつきながらプラスティック版をバン!と机に叩きつける人がいた。
解決の参考になるか、わからないが、私なりの考えを書く。
この問題は単純なようで複雑であると思う。
指導する前に管理者は3つのことを準備したほうが良い。
- 事実を確認する(現状の把握)
- 『あるべき姿』の設定
- 『上層部』への相談
の3つ。
1の「現状把握」は、「その人(怒るスタッフ)の事を他のスタッフがどう感じているか」を聞き込む。
攻撃は特定のスタッフだけなのか、全員に対してそういう態度なのか。
師長(管理者)から見て、どう思うのか・・・をまとめる。
(頭の中だけでは、感情的になるので、ノートにまとめておいたほうが良い)
現状は冷静に情報として集める。
2の「あるべき姿の設定」は「その組織(集団)として何を大事にしたいのか」を明確にする。
意外とこの設定が曖昧で上手くいかない組織が多い。
『結果』を重視する組織は、知識やスキルを持っていない人を一定のレベルに上げなければならない。弱肉強食の世界で、できない人は排除しなければならない場合もある。
軍隊のようなイメージで、結果を全てとする。
『和』を重視する組織は、知識やスキルが無くても、「みんなでやる」事を重視する。
ミスを責めず、みんなでカバーし、一緒にやっていく事を大切にする。
結果は求めず、できない事に目をつむる事もある。
どちらが『良い』とか『悪い』とか言っているわけではない。
その組織(集団)として、何を重要と考えるのかの基準は管理者が持っておかなければならない。
とても難しいが、とても重要な事である。
どちらかを取れば、どちらかは捨てなければならない事もある。
管理者として何を大切にしたいのか・・・は持っておかなければならない。
問題と思われている「怒るスタッフ」が、知識やスキルが一流であった場合。。。
「結果」を重要視する組織では、そのスタッフは重宝される。
周囲の人に対する態度は悪いかもしれないが、スタッフのミスや知識不足にいち早く気づき、指摘する。
結果的にスタッフのレベルが上がる。(かもしれない)
「和」を重要視する組織では、そのスタッフは煙たいだけだ。
スタッフの攻撃は全体の和を乱す。
その人を早急に排除しなければ、スタッフのやる気が損なわれ、生産性に響く。
スタッフが自衛のためにウソをつき始めるかもしれない。
3の上層部への相談は問題のスタッフの対処を一緒に考えてくれる仕組みを作る。
師長だけでは負担が大きい。
精神的負担を軽くするためにも、自分が「悩んでいる」という事を相談しておく。
副看護部長や看護部長が「私ごと」として考えてもらえたら成功である。
さて・・・
ここまでは面接の為の準備。
師長(管理者)面接の実践
私なら、主任と事前に打ち合わせをして、面接に一緒に入ってもらう。
(主任が何も発言しなかったとしても、1対1より2対1の方が心理的に強い)
また、師長と主任の考えが一致しているという潜在的なアピールにもなる。
「◯◯さんの普段の行動について気になる事があるのですが、良いですか?」
「机をバンと叩いたり、怒鳴ったりする行動が気になります」
(あくまで「行動」に対して自分たちが思うこと感じていることを話す。人格は否定しない)
「これについてどう思いますか?」(まずは相手の意見を先に聞き出す)
「そんな事やっていない」と否定するかもしれない。
「当たり前ですよ!あんな馬鹿なことやって!」と言われるかもしれない。
しかし、まずはここで本人の想い(感情)を聞き出す。
10分くらい「なるほど~」「うんうん」「そう思うんですね~」で良い。
(絶対にここで批判しないこと)
詰まったら、「ほかには?」と質問する。
「他に無い」と言われた時点で、こちらの想いを伝えていく。
次のポイントは、「あなたの事は信頼している」「頼りにしている」という内容を入れること。
そのスタッフが知識のある人なら、
「◯◯さんは普段からすごく勉強して知識も経験もあるじゃない」
「頑張ってるよね」と認め、
スタッフに対して腹が立つこともあると思うけど(共感)、賢い人がそんな風な態度を取ってしまうと勿体ない。
中には恐れているスタッフもいる・・・という事実も伝えていく。
次は自分の師長としての考えを伝える。
「私は失敗しても良いと思っている」
「その失敗を次に生かせるようにできたら良いと思っている」
「個人の失敗は私も含め、全体の失敗だから、個人的に責めることは良いと思っていない」
という感じで自分の考え(大事にしたいこと)も準備しておく。
「だから、一緒に手伝ってほしい・・・・」とお願いする。
「今は大変だけど、◯◯さんが力を貸してくれたら、絶対に良くなると思ってる」と『希望』を伝える。
上手くいくかもしれないし、いかないかもしれない。
結果は選べないので、上手くいかなくても気にしなくて良い。
ただ、このような面接は意外と効く。
『師長(管理者)』という立場の人間が話をじっくりと聞いて、期待を込めれば少しずつ変わってくる。
先日紹介した「頑固な羊の動かし方」の本にも、スタッフの育て方がわかりやすく書かれてある。(この本では問題行動のある人の「排除」を勧めているが・・・)
興味のある方は是非参考にして頂きたい。