医師のアドバイスよりネット情報を信じる患者
先日、医師がナースステーションに来て、
「患者さんが、私の言う事を信じないんですよ」とぼやいていた。
患者Aさんは、医師のアドバイスよりも、インターネットの一部の情報を信じており、
「先生は間違えています」「先生もネットで勉強したら良いですよ」と言ってくるそうだ。
医師だけでなく、看護師、栄養士が本人へ説明に行ったのだが、聞く耳持たず、対応に困っているという。
専門家の言う事より、ネットに書かれてある事が「真実」と捉えられる時代になってきたようだ。
しかし、この手の話は『昔から良くある話』である。
「インターネットが発達して情報が多くなったから」と言う人もいるが、私はこれだけではないと考えている。
確かに、ネット社会になってから、情報量は増え、一般の人が専門分野の知識を得られやすい環境にはなっている。
ただ、インターネットが発達する前から、この手の話はよく耳にしていた。
人間はもともと、他人からコントロールされることを嫌う。
指摘されることは嫌いであるし、基本的に他人にアドバイスなんて求めていない。
これは「本能レベル(動物レベル)」で刷り込まれているいるそうだ。
自分もそう感じる場面はないだろうか?
師長や主任から「こうやってください」とか「●●しなさい」と言われると、従いたくなくなるし、「この箱の中身は見ないでください」と言われると中を見たくなってしまう。
- 喫煙者に禁煙を勧めたい
- 高齢者に運転免許を返上してもらいたい
- 定期的に病院を受診してもらいたい
- お酒を止めてもらいたい
など、行動変容を促すことは簡単に行かない。
根底に「他人の言うことは聞きたくない」という人間の本能があるから、そこをコントロールしないとうまくいかない。
心配してアドバイスしたつもりが、下手をすればその人との関係性が悪くなる恐れもある。
先日買った本「RAPPORT 最強の心理術―――謙虚なネズミが、独善的なライオンを動かす方法」にはこう書いてあった。
誰かに行動を変化させるための動機付けを与えるコツは、善意の提案や忠告をすることではなく、彼ら自身の要求や希望に敬意を払って、それを反射してあげることである。
「私はあなたの為を思って」
とか
「こうした方が上手くできるよ」
という発言はグッと我慢しなければならない。
相手の思いを聞くことが大切であり、「どうしてそう思うの?」「もっと詳しく聞かせてほしい」と『尋ねて』いく方が良い。
この本では「反射」と書かれてある。
精神科分野の「話を聞く技術」の中に『オウム返し』と言われている手法があるが、これに近いかもしれない。
「なるほど、なるほど」
「それから?」
「へぇ~」
と言うだけで、良い答えに結び付くこともある。
すべてうまくいく訳ではないが、意見を押し付ける方法より、行動してもらえる確率は上がる。
「何をすべきか」の答えは私たちの中にはない。
相手の中にあるものを引き出さなければならない。
肝に銘じて関わってみよう。
見える世界が変わるはずである。