「ネットを見て、ここで治療をやってもらえると知って来ました」
突然救急外来に患者が県外から乗り込んできた。
話を聞くと、聞いたことも無い治療方法を話し出す。
「こんな治療方法をやってもらいたいのです」という要望。
医師が困って「そんな治療方法は知らない」と言うと、「知っている医師を紹介して欲しい」と言い出す。

困りました・・・

帰っていただきましょう。
色々と調べて見ると、精神疾患のある患者だったのだが、一度思い込んでいる物だから修正が聞かない。
最後には「入院させてくれ」だの「ここから帰ることができないから保護してくれ」などと言い出した。
最終的には「診療妨害」で警察を呼ぶ羽目になったのだが。。。
全く迷惑な客である。
インターネットが普及して、素人の知ったかぶりが増えた。
更に、「医療者ならこれくらい知ってますよね」的な発言も増えた。
私たちは知らないこともたくさんあるし、科が違えば内容が全然変わってくる。
私たちは「病院」という大きな箱の中で、一つ一つ「専門」に分かれている。
医師は「科」で分かれているし、「看護」は「ケア」を専門とする。
診療報酬関連や保険関連でも分かれている。
様々な職種が専門性をもって働いているが、外部から見ると「医療者なら幅広く全部知っていて欲しい」と思うようだ。
上から目線の発言には腹が立つが、こんな所で争っても仕方が無い。
知らないものは知らないのだから、「確認します」で構わない。
「そんな事も知らないのですか」と言われても気にする必要は無い。
あなたの「そんなこと」には合わせられないと心の中で思っておけば良い。
間違えても「看護師が全て知っているわけではありません」と相手の土俵に乗ってはいけない。
不利になる次の言葉を浴びせられるだけだ。
「申し訳ありません」と言っておけば良い。
ネットが全て正しいと思い込んでいる人がいる。
私たちは自分で経験したことや、周囲の人が話したことよりも「ネットに書いてある」ことを信じるようになってきているのではないか?
「真実」はGoogleでの検索で上位を占める結末によって定義されてきている。
医師や看護師は医療のプロである。
それでも、インターネットの情報の方が信頼される。
人間は信頼されず、画面が信頼される時代。
変な時代になったものだ。