看護師として働いている私たちは『社会人』として生きている。
小さい頃から、両親や社会の人々に助けられ、ここまで成長してきた。
社会人になるということは、社会のためになるように生きるということであると思う。
社会人は「してもらう」から「してあげる」に変わる。
SNSでは多くの「愚痴」を目にする。
他人から「してもらう」立場で考えている人は「足りない」ことばかりが目につき、不平不満が多い。
逆に、「してあげる」という意識で考えている人は多くのことに感謝しながら生きている。
「利他」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
自分よりも他人に良いことを考える。
時に自らを犠牲にして人のために尽くす。
そういう精神である。
看護師はこの「利他の心」が求められる場面がある。
これを「社会貢献」と捉えるか「馬鹿らしい」と捉えるか、同じことでも見方が変われば風景が変わる。
お寺の修行僧と老師の話を一つする。
有名な話なので、聞いたことのある人もいるかもしれない。
ある修行僧が「あの世には地獄と極楽があるそうですが、地獄とはどんなところなのですか?」と尋ねた。
すると老師は「確かにあの世には地獄もあれば、極楽もある。しかし、両者には想像したほどの違いがあるわけではなく、外見上は全く同じような場所だ。ただ一つ違っているのは、そこにいる人たちの心なのだ」
老師が語るには、地獄と極楽には同じように大きな釜があり、そこには同じように美味しそうなうどんが煮えている。
ところが、そのうどんを食べるには、長さ1メートルくらいの長い箸(はし)を使うしかない。
地獄に住んでいる人は、我先にうどんを食べようと、争って釜に箸をつっこんで食べようとするが、長い箸のせいで誰もうどんを口にすることができない。
一方、極楽では、同じ条件でも全く違う。
自分の長い箸でうどんをつかむと、釜の向こう側にいる人の口へと運び、「あなたからお先にどうぞ」と食べさせてあげる。
そうやってうどんを食べさせ合い、お腹いっぱいに満ち足りた気持ちになる。
私たちの職場はどうだろうか?
自分が働いている看護の世界はどうだろうか?
病院によって規模は違えど、同じような環境であろう。
ただ、そこにいる人達の考え方で「極楽」にも「地獄」にもなる。
温かい思いやりの心を持てるかどうかで、大きく変わってくる。
「利他の心」「世のため人のため」という気持ちは心のそこに持っておきたいものである。