「言った」「聞いてない」・・・というトラブルは日常的にある。
先日、「他科(たか)」の受診があった患者さんがいた。
「内科」で入院している患者さんが「外科」を受診する場合、「他科受診」と言う。
「内科」の先生が「外科」の先生へ相談するという意味でもある。
当院では、「受診願い」という文書で依頼する決まりになっており、
くだんのケースの場合、「内科の医師」が「外科の医師」へ手紙を書く。
もちろん、電子カルテ上のやり取りだ。
外科の医師はその「依頼書」を読んで、患者の状態を診る・・・という仕組み。
先日起こった事件は、外科外来の事務員(クラーク)が、「家族が来院できない」という理由で受診をキャンセルしていた。
内容の詳細に関する言及は避けるが、「看護師さんに伝えた」とクラークは言う。
担当看護師に確認すると「そんな事は聞いてない」と言う。
そして、面倒なことに、内科の医者は「外科受診を頼んでいたのに、なぜ受診ができていない」と怒る始末。
言った、言ってない、怒る・・・という同時多発テロ並みのトラブルが発生した。(大げさ)
「言った・聞いてない」はよく起こる。
人間は「自分の見たいように見る、聞きたいように聞く」動物なので、上手く伝わらないようになっている。
「伝言ゲーム」が違う文章に変わっていくのがいい例だ。
組織の場合、パワーバランスで「正しい」「正しくない」が決まる。
そんなものだ。
「言った」「聞いてない」は証拠がないと議論できない。
そして、看護師は「医者に怒られた」事を恐れる。
私からすれば、「勝手に怒っているのは医者であり、謝っておけば良い」
感情の入った状態では、理論では説得できない。
ここで役に立つのが「管理職」の役職である。
「師長」という役職を使って謝罪する。
悪いと思っていなくても謝る。
あまり引き伸ばすものではない。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「私の指導不足でした」
と言い、「このように対応しようと考えていますが、よろしいでしょうか?」と提案する。
最後は「今後ともよろしくお願いします」と言えば良い。
ハリウッドの女優並みに演技を行えば、たいてい相手は黙る。
何度か書いていると思うが、「何を言うかではない、誰が言うかが大事なのだ」
「役職」は鎧であり、「言葉」は武器である。