人間は他人に影響される動物である。
集団になれば、その兆候は明らからに表れる。
「社会的証明の原理」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断するそうだ。
私たちは自分でも気づかないうちにその影響を受けている。
テレビの番組で「故意に」入れられた笑い声は、たいして面白い内容でなくても、「これが面白い部分なんだ」と頭が理解する。
笑い声は、その場面が面白いように感じてしまうから不思議だ。
募金箱は「空」にしておいておくよりも、前もってお金を入れておくことで実入りがよくなるそうだ。
『ここで募金をすることが、ふさわしい行動である』という印象を与える。
広告でも「一番の売れ行き」とか「売上ナンバーワン」という文句を入れることで、売れ行きを伸ばす。
日常のさまざま場所で「社会的証明の原理」は活用されている。
看護の場面で考えてみよう。
例えば、管理者が発する「朝の挨拶」や「笑顔」は風土を良くするのに使える。
管理者が「大きな声」で「何度も(スタッフが入ってくるたびに)」挨拶していると、スタッフも同じように大きな声で挨拶するようになる。
朝から笑顔で対応すると、その態度がこの職場ではふさわしい態度だと考える。
管理者が率先して行動することで、「この行動が正しい行動」という証明になる。
「朝から大きな声で元気に挨拶することは、良いことに決まっています」ということだ。
セールスマンのアドバイスには、このような言葉があるそうだ。
「自分で何を買うか決められる人は全体のわずか5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちです。ですから、私たちがあらゆる証拠を提供して人々を説得しようとしても、他人の行動にはかなわないのです」
インターネットの世界で「口コミ」が力を持っているのはこの原理によるものだ。
メーカーがどんなに素晴らしい言葉を発しても、その製品がどれだけ優れていても、ユーザーの言葉のほうが信用されるのだ。
私たちは「周囲」を観察しながら、それに合わせて生きている。
それを上手に活用することで、良くすることも悪くすることもできるのだ。
せっかくなら「良い方向」に活用していきたい。
管理者なら誰しも考えることであろう。